おさけおいしい

飲んだ酒の感想。飲んだら更新、不定期。

おとんのスペシャルお酒入門セット中編

誕生日プレゼントにもらった酒が減らないまま、父からお祝いの外食をどこでやるか相談が来た。
「お寿司、焼肉、しゃぶしゃぶ、ステーキ、ラーメン、その他」という大まかなジャンルの提示を受け、港町の寿司がまた食べたいなーなどと考えているうちに「酒が飲める所もありだわ」と追加情報を得た。
酒。酒である。二十歳になってまだほろよいのひと缶しか知らない私だが、飲食店で酒を飲む機会が回ってきた。これには乗らない手はない。

父曰く、以前バイキングに行ったしゃぶしゃぶ屋の飲み放題は楽しそうだったらしい。
添付されたFacebookの写真を見る。酒瓶が逆さまになって、瓶の口には何かよくわからないパーツが取り付いているものが、ずらりと並んでいる風景。セルフサービスらしい。確かに、自分の手でいろいろできるのは面白いかもしれない。

ということでしゃぶしゃぶに決めた。当日は父も飲めるよう、店にはタクシーで向かう。店の前のメニュー表を見てコースを決めた。アルコールの飲み放題はけっこう高いので、肉はいちばん安いコースだ。豚肉1種類だけが出てくる。
その店で、豚、鶏、ラム、牛と、4種類以上の肉が出るコースを一度選んだことがある。確かにどれもおいしく、飽きないのだが、それに加えて野菜やタレやなんやと楽しむ要素が多いので舌は忙しない。そこに酒の味が絡んでくれば、口の中でいつ舌が過労死するかわかったものではない。金銭的な事情とはいえ、ありがたかった。

肉と麦飯をそこそこに食べ、いざ飲まんとドリンクバーに向かうも、よくわからない。何を飲むのがいいかも、酒の注ぎ方もいまいちよくわからない。ぼけーっと突っ立っていると、父が手本を見せようとカシスオレンジを作ってくれた。どうも、逆さに吊られた酒瓶の口を、コップのふちで持ち上げると、決まった量の酒が出る……ようにできているらしい。
カシスオレンジを飲む。わからない。普段オレンジジュースを飲まないので違いがわからない。おいしいことにはおいしい。ふつうのジュースだこれ。

飲みきったあと、ドリンクバーに改めて行く。逆さのルジェカシスの隣にはルジェペシェがあった。あれは何かのゲームのキャラ名の元ネタだったので、昔一度調べたことがあった。桃のリキュールだ。
オレンジジュースにピーチリキュールを入れると、ファジーネーブルというカクテルになるとメモが貼ってあった。変な名前だなと思いつつカクテルを作り、飲む。
今度は、少しわかる。さっきとは違う。カシスとは違う、柔らかい感じがした。比較すればカシスオレンジに対するわからなさがなくなるのでは、と思った私の狙いはだいたい当たった。なんとなく、カシスオレンジのほうが好みだった気がする。向こうの方がはっきりしているというか。そういえば色もけっこう違う。

2杯も飲むとだいぶ顔も火照ってくるもので、カクテルは次で最後にしよう、厳選しようと決めた。父がウーロン茶のカクテルを熱心に勧めてくるので、少し迷いつつもカシスウーロンに。
もともとあまりウーロン茶は好きではなかったのだが、カシスウーロンはおいしい。爽やかでさっぱりしていて、甘酸っぱく、食事中に飲むと清涼剤になる。
ジュースを飲んでいるような危なっかしさは、ウーロンが甘みを持っていないせいかそんなになかった。飲みやすいことには間違いないのだが。

そして、もうそろそろ酒はいいかな、締めのソフトクリームカラースプレーがけでも食べるかな、というころに、さらに父が謎の日本酒を持ってきた。私が気づかない間に一升瓶から徳利に移していたようで、さらにそれをお猪口に注ぎ渡される。
困った。ちょっとお腹が苦しいし酔いすぎが不安だ。しかし父は日本酒を甘い酒だと言っていたし、物は試しにと舐める。
味は、甘くない。思ったより全然甘くない。騙された。米を噛み続けたら甘いとかそういうレベルでの甘さであって、カクテルと比較してはいけない種類の甘さだし、もっと言えば台所でこっそり舐めたみりんの甘さには遠く及ばない。みりんのほうがおいしい。
父に文句を言うと困った顔をしていた。

今度こそとソフトクリームを絞りご満悦の私に質問が飛んだ。その日飲んだものでいちばんおいしかった酒は何か。
個人的にはカシスウーロンだった。カシスリキュールとウーロン茶ならそう入手が限られるわけでもないだろうし、気が向いたら自宅でも作るかもしれない。
父の奢りで会計し、帰宅。タクシー待ちの間浴びた春の夜風は、熱くなった体にとても心地よかった。